事例紹介
今回はよきとものサービスを導入いただいた株式会社ネットプロテクションズ 人事総務グループの山下貴史さんにお話を伺いました。
江尻: 最初にお会いしたのが2021年の3月、僕たちがよきともという会社を作ってすぐの頃でした。対話やコーチングを使って、個人と組織の壁をなくしていくサービスを提供している会社なんですよってお伝えして、山下さんたちに興味を持っていただいたのがきっかけで。
山下さん: そうでしたね。コーチングは社内で個人が自主的に受ける動きが広がってきていたり、若手メンバーへの研修が手厚くなっていたりしたのですが、中堅やベテランメンバー向けにはここ5年ぐらい具体的な研修を提供できておらず、彼らに対して何か施策ができないかなと、明確にではないですが考えていたところでした。
江尻: 結果としては、ディープリスニングを2021年9月と12月の2回、別々のグループに実施させていただきましたけれど、誰をターゲットに、どんなことをするかということを、けっこうがっつり時間をかけてお話しさせていただきましたね。
山下さん: そうですね。途中で施策対象のメンバーから話を聞くにつれ、ちょっと予想と違ってきてしまったんです。対象メンバーのニーズや、それぞれに個人や会社の何を大事にしているかが思った以上に多様化していて、これをまとめるのが果たしていいことなのか?という疑問が大きくなってきまして。 そこで江尻さん達と、何度も何度もミーティングさせてもらったという(笑)
江尻: 一般的には、社長や上層部が「こういう課題があります」というのを持っていて、それを人事部門が自分たちの意見を織り込んで形にしていく、というのが多いように思うんですけれど。
山下さん: そうですね。
江尻: それがネットプロテクションズ(以下NP)さんでは無かったな、と思いました。関係する全員に話を聞いていて、それが新鮮でしたね!みんながどう思うかを、すごく大事にされていた印象です。
山下さん: はい。NPは人事も、社長もそうですが、人事権や研修の執行権がほぼないんです。社員のニーズにちゃんと即していないと。一方的に「この研修やって」ということはできないし、人事側もそうしたいと思っていないですし。
江尻: プロジェクトで長くお話ししてきた中で、「本当にこの人たちにこれが必要か」とか、「形骸化したものにならないか」という、研修を受ける人たちのことをすごく考えられているなと感じました。
山下さん: そうですね。できるだけメンバーのニーズを尊重したいですし、人事としても、課題仮説のブラッシュアップの余地がさらにあるのでは、とも考えていました。 御社からも、研修をやることが目的じゃなくて、やるからにはメンバーにとっていいものじゃないと、と言っていただいたことは心強かったです。 お言葉に甘えて、ミーティングにむちゃくちゃ時間をかけさせてもらいました(笑)
江尻: とんでもないです!本当にいいものを届ける、いいものとは何だ?ということを、たくさん話せたと思っています。
江尻: そんなプロセスを経て、社員一人ひとりの生の声を聴くディープリスニングを実施させていただいたわけですが、結果のレポートをご覧になった感想、実施後に起きたことなど、お伺いできたらと思います。
山下さん: 実施後のレポートで、経営ないしはマネジメントに対しての意見が、よくも悪くもすごく多様化しているのを再認識しました。「僕はこう思う」というのがしっかりIメッセージで出ていたなぁと。そこは面白かったです。 あとは、ミッション・ビジョン・バリューをどう考えているか?の問いに対して、「ここをアップデートする必要がある」「このままでいい」といった意見のブレはあったんですけど、ミッション・ビジョン・バリューに対して共感しないっていうメンバーがいなかった。 ここ数年コロナの影響もあって、全社のベクトルを確認する取り組みを持てていなかったんです。それにも関わらず、大きなベクトルは、ちゃんと一定レベルではすり合っているんだ、というのを改めて確認できたように思います。 そういう意味でのディープリスニングの意義はありました。けっこうそこが大きいかな。
江尻: 確かに、社長の柴田さんもレポートをご覧になって、「そうだよね」とおっしゃったと伺いました。
山下さん: はい、言っていました。
江尻: これまでなんとなく想像していたことがレポートという見える形になって、「そうだったんだ」と再認識できるところも、ディープリスニングの良い効果だと思っています。
江尻: 「決める」とか「変える」とかじゃなくて、「すり合わせが必要だ」っていう表現をする方が多くて、すごくおもしろいなと思ったんです。「新しく何かを決めなきゃいけない」じゃなくて、「話し合われていない」ということに、課題感を持つんですね。 NPさんは、話し合うということにすごく価値を置いている。それは逆に、常日頃話し合っているからこそなんだなと思いました。
山下さん: 確かにそうかもしれません。「すり合わせる」は一般的な意味での、妥結点を見つけるっていうニュアンスはもちろん込められているんですけれども、社内では個人の意見を曝け出し、知り合い、理解しあった上で結論を出すっていう感覚が強いと思います。 全社として、そういうプロセスを踏んで意思決定していくという習慣、習性、風土みたいなのは確かにありますね。
江尻: そのプロセスを重視する価値観は、話を聴いた僕らの学びにもなりました。”落としどころ” に向かって、無理やり何か妥協点を探そうぜ!ではなく、純粋に話し合うプロセスを大事にしているんですね。それは非常に、御社のユニークなところだと思います。
江尻: あとはやっぱり、みなさん会社の文化が好きなんですよね。これは強烈に感じました。
山下さん: ははは(笑)
江尻: フラット、もしくはティール[1]な関係という表現でいいかはわかりませんが、誰もが自由に発言ができて、それを応援するということに、すごく価値を感じている人が多い印象です。ともすれば個人でバラバラになりそうですが、特に中堅やベテランの人はこの価値観を尊重していると感じました。
山下さん: そうですね。応援する意識が強い半面、そうやって支える責任を重く感じている人もいるかもしれません。別に自分を抑えて若者を応援してほしいわけではなく、中堅やベテランでもWill(意思)を発信していくれるといいと思っています。僕自身もたまに若手に言われるんですよ(笑)僕はWillを発しているつもりなんですけれど。それは今回のディープリスニングのレポートでも感じたところですね。
江尻: お話を伺っていて思い出したのですが、御社はWillも大事にされていますよね。結局個人がどうしたいか?という内発的動機を、同じく尊重しているという印象です。
山下さん: 外的な「これをやるべき」では、やっぱり人って動かないと思っています。いろんなことを進めていく上で、個人の内発的動機の強さ、すごさを、私自身も感じていますし、尊重したいと思っています。
江尻: そこはとても共感します!逆にWillがない人はしんどいですね。
山下さん: はい、当社は受け身の人にとっては、かなり厳しい組織だと思います(笑)
江尻: 逆にNPさんでWillがある人は、入社1年目でも前に立って仕事をして、周りの人が支援してくれる。そこがすごいですね。 一般的な人事制度では、持っている能力と資格、スキルなんかで給与や職制が決まると思うのですが、NPさんはそうではなくて、人間としての発達のようなものを、「バンド[2]」という形で表現しています。会社で個人の成長をみんなが応援するというのも、とてもユニークですね。
山下さん: 柴田はこの会社組織を、「この生態系」と言うことがあります(笑)社内では「育成」でなく、「相互成長支援」という言い方をしています。「育成」だと、先輩から後輩に、というイメージが強いですが、NPでは先輩が後輩から学ぶこともあるでしょう、という意味でそうした言葉が交わされています。そういう言葉に代表されるような、個人の発達を支援するカルチャーがあるように思います。
江尻: そうそうそう!それがすごく、ユニークでおもしろいなぁと思いました。
江尻: 今回のディープリスニング結果を受けて、今後社内での人事施策はどんな風にお考えですか?
山下さん: ディープリスニングを受けた人たちからは「これだけ全員に聞いたんだから、次は何してくれるの?」という期待を受け取っていますね(笑) そこに応えていかねばと思いつつ、お伝えしたようにみんな多種多様なので、どうしようかと悩ましいです。 ただ、「ミッション・ビジョン・バリューと向き合うべき」っていう意見は比較的多くて。前段で全体のベクトルは合っているという話をしましたけれど、ベクトルが合っているということを、社員みんなが確認したがっているんじゃないか、と感じています。 その声には応えたいと思っています。全社規模の取り組みとして、社員全員参加の合宿をするとか。
江尻: 全員参加というのが、NPさんらしいですね。
山下さん: 以前は全社員参加のリアル合宿があったんですよ。3日間、もう地方拠点のメンバーも全員集めて、話す以外何もすることがないような場所で実施しました(笑) 今、コロナで働き方が多様化していること自体は、良いほうに捉えているんですけれど、対面で直接コミュニケーションを取ったことがあるメンバーは限られています。社内の人間関係のバリュエーションが増えたことで、先ほどの「すり合わせ」に至るまでのプロセスは以前より難しくなるでしょうね。でも、難しいからやらないということでは当然なくて、難しいからこそやる、やりたいと思っています。
もう1つは、以前から個人的に構想していたんですけれど、自学支援と集合研修の間にあるようなものができたらいいなと考えています。個人が勉強したいものの費用補助制度は、もちろん今もあります。しかし集団で学ぶとなると、とたんに何十人規模の集合研修になってしまう。 僕は企業内での学びを「自学」と「共学」というふうに考えているんです。自ら学ぶ「自学」の支援は当社でも様々な制度を用意しています。だけど、大学のゼミのように、同じテーマについて少人数で学び合う「共学」の場をもっと作れないかと思っています。
江尻: 希望者の手挙げ制で。
山下さん: そうです。公開されているプログラムに、参加希望者が5人以上手を挙げたら、そのプログラムは実施確定するという仕組みを導入できたらと考えたりしています。
江尻: うん、うん。以前から、手挙げ制のアイデアについては何度かお話しいただきましたよね。とても素敵な取り組みだと思います。
山下さん: 私が考える強い組織というのは、変化のスピードに対して柔軟かつ迅速に対応できる組織だと思っています。そのためには、さまざまな色を持ったメンバーが存在して活躍している、かつ、それを支える組織という土壌が大事だと考えています。平たく言うと、多様な人がそれぞれ活躍できる土壌、やっぱりここを重視したいと思うんです。 だから「正解はこうだ!」という答えを一律に、会社で明確に持ってしまうことに、少し危うさを感じることがあります。
江尻: トップダウンでの「これが正しい姿だ!」とかね。それもとても共感します。 ディープリスニングでもそうでしたが、こうやって山下さんとお話ししている中でも、NPさんが多様性や個人のWillを尊重されていることが、すごく伝わってきました。 制度面だけでなく、目に見えない関係性や意思決定のプロセスにおいても、ティール組織の思想が根付いているんですね。
山下さん: はい。あらためて、こうやってお話ししてみて、他者から見たNPを言語化していただいたように思います。
江尻: よきともとしても、非常に学びが多いプロジェクトでした。お話しできてよかったです。どうもありがとうございました!
1999年に慶應義塾大学経済学部卒業後、 通信業界での研究開発を経て、インターネット広告企業にて、自社サービス 開発や開発部門の統括、子会社の役員としてオフショア開発立ち上げ等を担当。2014年に株式会社ネットプロテクシ ョンズに入社。IT部門の組織開発、NP後払いのサービス改善等を担っていたが、現在は人事労務、総務、法務、コーポレ ートガバナンス領域の各施策を推進している。
[1] ティール(組織)。フレデリック・ラルーによって提案された組織のあり方。組織をひとつの生命体として見立て、関わるメンバー全員が意思決定権を持ちながら、進化する目的を実現するために関係し合い、行動していく組織形態を指す。 [2] 株式会社ネットプロテクションズでの、コンピテンシーに基づくグレード区分の名称。ネットプロテクションズは、役職としてのマネージャーを廃止し、社員全員がフラットかつ有機的に権限・責任を持つ「Natura」というオリジナルの人事制度を実施している。
プロジェクト概要
担当者インタビュー:山下 貴史さん
自律する生態系としての組織づくりを目指して
今回はよきとものサービスを導入いただいた株式会社ネットプロテクションズ 人事総務グループの山下貴史さんにお話を伺いました。
社員にとって本当に必要な研修を届ける
江尻: 最初にお会いしたのが2021年の3月、僕たちがよきともという会社を作ってすぐの頃でした。対話やコーチングを使って、個人と組織の壁をなくしていくサービスを提供している会社なんですよってお伝えして、山下さんたちに興味を持っていただいたのがきっかけで。
山下さん: そうでしたね。コーチングは社内で個人が自主的に受ける動きが広がってきていたり、若手メンバーへの研修が手厚くなっていたりしたのですが、中堅やベテランメンバー向けにはここ5年ぐらい具体的な研修を提供できておらず、彼らに対して何か施策ができないかなと、明確にではないですが考えていたところでした。
江尻: 結果としては、ディープリスニングを2021年9月と12月の2回、別々のグループに実施させていただきましたけれど、誰をターゲットに、どんなことをするかということを、けっこうがっつり時間をかけてお話しさせていただきましたね。
山下さん: そうですね。途中で施策対象のメンバーから話を聞くにつれ、ちょっと予想と違ってきてしまったんです。対象メンバーのニーズや、それぞれに個人や会社の何を大事にしているかが思った以上に多様化していて、これをまとめるのが果たしていいことなのか?という疑問が大きくなってきまして。
そこで江尻さん達と、何度も何度もミーティングさせてもらったという(笑)
江尻: 一般的には、社長や上層部が「こういう課題があります」というのを持っていて、それを人事部門が自分たちの意見を織り込んで形にしていく、というのが多いように思うんですけれど。
山下さん: そうですね。
江尻: それがネットプロテクションズ(以下NP)さんでは無かったな、と思いました。関係する全員に話を聞いていて、それが新鮮でしたね!みんながどう思うかを、すごく大事にされていた印象です。
山下さん: はい。NPは人事も、社長もそうですが、人事権や研修の執行権がほぼないんです。社員のニーズにちゃんと即していないと。一方的に「この研修やって」ということはできないし、人事側もそうしたいと思っていないですし。
江尻: プロジェクトで長くお話ししてきた中で、「本当にこの人たちにこれが必要か」とか、「形骸化したものにならないか」という、研修を受ける人たちのことをすごく考えられているなと感じました。
山下さん: そうですね。できるだけメンバーのニーズを尊重したいですし、人事としても、課題仮説のブラッシュアップの余地がさらにあるのでは、とも考えていました。
御社からも、研修をやることが目的じゃなくて、やるからにはメンバーにとっていいものじゃないと、と言っていただいたことは心強かったです。
お言葉に甘えて、ミーティングにむちゃくちゃ時間をかけさせてもらいました(笑)
江尻: とんでもないです!本当にいいものを届ける、いいものとは何だ?ということを、たくさん話せたと思っています。
社員の生の声を聴いてわかったこと
江尻: そんなプロセスを経て、社員一人ひとりの生の声を聴くディープリスニングを実施させていただいたわけですが、結果のレポートをご覧になった感想、実施後に起きたことなど、お伺いできたらと思います。
山下さん: 実施後のレポートで、経営ないしはマネジメントに対しての意見が、よくも悪くもすごく多様化しているのを再認識しました。「僕はこう思う」というのがしっかりIメッセージで出ていたなぁと。そこは面白かったです。
あとは、ミッション・ビジョン・バリューをどう考えているか?の問いに対して、「ここをアップデートする必要がある」「このままでいい」といった意見のブレはあったんですけど、ミッション・ビジョン・バリューに対して共感しないっていうメンバーがいなかった。
ここ数年コロナの影響もあって、全社のベクトルを確認する取り組みを持てていなかったんです。それにも関わらず、大きなベクトルは、ちゃんと一定レベルではすり合っているんだ、というのを改めて確認できたように思います。
そういう意味でのディープリスニングの意義はありました。けっこうそこが大きいかな。
江尻: 確かに、社長の柴田さんもレポートをご覧になって、「そうだよね」とおっしゃったと伺いました。
山下さん: はい、言っていました。
江尻: これまでなんとなく想像していたことがレポートという見える形になって、「そうだったんだ」と再認識できるところも、ディープリスニングの良い効果だと思っています。
江尻: 「決める」とか「変える」とかじゃなくて、「すり合わせが必要だ」っていう表現をする方が多くて、すごくおもしろいなと思ったんです。「新しく何かを決めなきゃいけない」じゃなくて、「話し合われていない」ということに、課題感を持つんですね。
NPさんは、話し合うということにすごく価値を置いている。それは逆に、常日頃話し合っているからこそなんだなと思いました。
山下さん: 確かにそうかもしれません。「すり合わせる」は一般的な意味での、妥結点を見つけるっていうニュアンスはもちろん込められているんですけれども、社内では個人の意見を曝け出し、知り合い、理解しあった上で結論を出すっていう感覚が強いと思います。
全社として、そういうプロセスを踏んで意思決定していくという習慣、習性、風土みたいなのは確かにありますね。
江尻: そのプロセスを重視する価値観は、話を聴いた僕らの学びにもなりました。”落としどころ” に向かって、無理やり何か妥協点を探そうぜ!ではなく、純粋に話し合うプロセスを大事にしているんですね。それは非常に、御社のユニークなところだと思います。
個人の成長をみんなで応援する
江尻: あとはやっぱり、みなさん会社の文化が好きなんですよね。これは強烈に感じました。
山下さん: ははは(笑)
江尻: フラット、もしくはティール[1]な関係という表現でいいかはわかりませんが、誰もが自由に発言ができて、それを応援するということに、すごく価値を感じている人が多い印象です。ともすれば個人でバラバラになりそうですが、特に中堅やベテランの人はこの価値観を尊重していると感じました。
山下さん: そうですね。応援する意識が強い半面、そうやって支える責任を重く感じている人もいるかもしれません。別に自分を抑えて若者を応援してほしいわけではなく、中堅やベテランでもWill(意思)を発信していくれるといいと思っています。僕自身もたまに若手に言われるんですよ(笑)僕はWillを発しているつもりなんですけれど。それは今回のディープリスニングのレポートでも感じたところですね。
江尻: お話を伺っていて思い出したのですが、御社はWillも大事にされていますよね。結局個人がどうしたいか?という内発的動機を、同じく尊重しているという印象です。
山下さん: 外的な「これをやるべき」では、やっぱり人って動かないと思っています。いろんなことを進めていく上で、個人の内発的動機の強さ、すごさを、私自身も感じていますし、尊重したいと思っています。
江尻: そこはとても共感します!逆にWillがない人はしんどいですね。
山下さん: はい、当社は受け身の人にとっては、かなり厳しい組織だと思います(笑)
江尻: 逆にNPさんでWillがある人は、入社1年目でも前に立って仕事をして、周りの人が支援してくれる。そこがすごいですね。
一般的な人事制度では、持っている能力と資格、スキルなんかで給与や職制が決まると思うのですが、NPさんはそうではなくて、人間としての発達のようなものを、「バンド[2]」という形で表現しています。会社で個人の成長をみんなが応援するというのも、とてもユニークですね。
山下さん: 柴田はこの会社組織を、「この生態系」と言うことがあります(笑)社内では「育成」でなく、「相互成長支援」という言い方をしています。「育成」だと、先輩から後輩に、というイメージが強いですが、NPでは先輩が後輩から学ぶこともあるでしょう、という意味でそうした言葉が交わされています。そういう言葉に代表されるような、個人の発達を支援するカルチャーがあるように思います。
江尻: そうそうそう!それがすごく、ユニークでおもしろいなぁと思いました。
これからの取り組み
江尻: 今回のディープリスニング結果を受けて、今後社内での人事施策はどんな風にお考えですか?
山下さん: ディープリスニングを受けた人たちからは「これだけ全員に聞いたんだから、次は何してくれるの?」という期待を受け取っていますね(笑) そこに応えていかねばと思いつつ、お伝えしたようにみんな多種多様なので、どうしようかと悩ましいです。
ただ、「ミッション・ビジョン・バリューと向き合うべき」っていう意見は比較的多くて。前段で全体のベクトルは合っているという話をしましたけれど、ベクトルが合っているということを、社員みんなが確認したがっているんじゃないか、と感じています。
その声には応えたいと思っています。全社規模の取り組みとして、社員全員参加の合宿をするとか。
江尻: 全員参加というのが、NPさんらしいですね。
山下さん: 以前は全社員参加のリアル合宿があったんですよ。3日間、もう地方拠点のメンバーも全員集めて、話す以外何もすることがないような場所で実施しました(笑)
今、コロナで働き方が多様化していること自体は、良いほうに捉えているんですけれど、対面で直接コミュニケーションを取ったことがあるメンバーは限られています。社内の人間関係のバリュエーションが増えたことで、先ほどの「すり合わせ」に至るまでのプロセスは以前より難しくなるでしょうね。でも、難しいからやらないということでは当然なくて、難しいからこそやる、やりたいと思っています。
もう1つは、以前から個人的に構想していたんですけれど、自学支援と集合研修の間にあるようなものができたらいいなと考えています。個人が勉強したいものの費用補助制度は、もちろん今もあります。しかし集団で学ぶとなると、とたんに何十人規模の集合研修になってしまう。
僕は企業内での学びを「自学」と「共学」というふうに考えているんです。自ら学ぶ「自学」の支援は当社でも様々な制度を用意しています。だけど、大学のゼミのように、同じテーマについて少人数で学び合う「共学」の場をもっと作れないかと思っています。
江尻: 希望者の手挙げ制で。
山下さん: そうです。公開されているプログラムに、参加希望者が5人以上手を挙げたら、そのプログラムは実施確定するという仕組みを導入できたらと考えたりしています。
江尻: うん、うん。以前から、手挙げ制のアイデアについては何度かお話しいただきましたよね。とても素敵な取り組みだと思います。
山下さん: 私が考える強い組織というのは、変化のスピードに対して柔軟かつ迅速に対応できる組織だと思っています。そのためには、さまざまな色を持ったメンバーが存在して活躍している、かつ、それを支える組織という土壌が大事だと考えています。平たく言うと、多様な人がそれぞれ活躍できる土壌、やっぱりここを重視したいと思うんです。
だから「正解はこうだ!」という答えを一律に、会社で明確に持ってしまうことに、少し危うさを感じることがあります。
江尻: トップダウンでの「これが正しい姿だ!」とかね。それもとても共感します。
ディープリスニングでもそうでしたが、こうやって山下さんとお話ししている中でも、NPさんが多様性や個人のWillを尊重されていることが、すごく伝わってきました。
制度面だけでなく、目に見えない関係性や意思決定のプロセスにおいても、ティール組織の思想が根付いているんですね。
山下さん: はい。あらためて、こうやってお話ししてみて、他者から見たNPを言語化していただいたように思います。
江尻: よきともとしても、非常に学びが多いプロジェクトでした。お話しできてよかったです。どうもありがとうございました!
Profile
1999年に慶應義塾大学経済学部卒業後、 通信業界での研究開発を経て、インターネット広告企業にて、自社サービス 開発や開発部門の統括、子会社の役員としてオフショア開発立ち上げ等を担当。2014年に株式会社ネットプロテクシ ョンズに入社。IT部門の組織開発、NP後払いのサービス改善等を担っていたが、現在は人事労務、総務、法務、コーポレ ートガバナンス領域の各施策を推進している。
[1] ティール(組織)。フレデリック・ラルーによって提案された組織のあり方。組織をひとつの生命体として見立て、関わるメンバー全員が意思決定権を持ちながら、進化する目的を実現するために関係し合い、行動していく組織形態を指す。
[2] 株式会社ネットプロテクションズでの、コンピテンシーに基づくグレード区分の名称。ネットプロテクションズは、役職としてのマネージャーを廃止し、社員全員がフラットかつ有機的に権限・責任を持つ「Natura」というオリジナルの人事制度を実施している。